「できないかも」より「やってみる!」―【手足の指欠損】みんなでボルダリングに挑戦
~そびえ立つ壁面にパズルのように敷き詰められた大小の突起物。そこに手足をかけながら力強く登って行く人々~
皆さん、このような映像をご覧になったことはありませんか?
こんにちは! Hand&Foot運営部です。
これはフリークライミングの一種で『ボルダリング』と呼ばれるスポーツ。
2020年の東京オリンピック*から初めて正式種目となることを受け、国内愛好者が50万人以上に急増。ジムや施設も全国で300以上にも増え、空前の大ブームとなっているスポーツなんです。
専用靴やチョーク以外必要としない身軽さや、体感が鍛えられるフィットネス的要素などから、老若男女の皆さん、気軽に始められているようです。
また登るルートをパズルを解くように考えることで(オブザベーション)、思考・判断力の向上も期待できることから、小さいうちから始めるお子さんの姿も増えているようですよ。
はしごを登るくらいの腕力があれば出来るようですが、一見手や指の力がとても重要に見えます。
ということは手指が短かったたり欠損があるお子さんには少しハードルが高いスポーツなのでしょうか…
いやいやきっと子ども達は出来るはず!
出来るかどうか分からないなら先ずは挑戦してみよう!
この団体ポリシーのもと、会員ご家族の皆さんと一緒に初めてのボルダリングに挑戦して参りました!
今回はその模様をリポートさせていただきます。
※パラクライミングは2020東京パラリンピック未採用
ボルダリングに挑戦!
~チャレンジ企画第一弾~
リポートの前に先ずはボルダリングの解説を少々。
ボルダリングとは…岩を素手で登ること。 以上!
シンプルですよね(笑)。 ただその"身体一つで"というシンプルさが醍醐味であり人を惹きつける魅力なのかもしれません。
クライミング(登ること)にはロッククライミングやアイスクライミングなどがあり、ロッククライミングは更にフリークライミング、エイドクライミング(人工的な登攀道具を使う)に分けられる。
フリークライミングは更に安全確保用にロープを使うルートクライミングと何も使わないボルダリングに分けられる。
自然の岩、もしくは高さ5m以下の人口壁を突起物(ホールド)を頼りに、体一つで登るスポーツのこと。
競技ルール:テープなどで示されたホールドを両手で掴んでスタート。
ゴールのトップホールドを両手で保持し安定した姿勢を取ると完登とみなされる。
埼玉県鴻巣市の少人数予約制ボルダリングジム「KSK’s ROCK CRAFT」に行ってきました
そんなボルダリングの魅力に取り憑かれた少年が埼玉県にいました。名前はけいすけさん。
幼い頃から高い所に上がるのが大好きだった彼は、すぐにクライミングの虜に。自宅車庫に人工壁を造って練習に励み、小学六年生で全国大会七位になるほどの実力を身につけました。
生まれつき発達障害のあったけいすけさんは、"いつか子どもたちにクライミングの楽しさを伝えたい"という素敵な希望を持っていました。
しかし2018年5月。交通事故の後遺症により、24歳という若さでこの世を去りました。
そのけいすけさんの希望、強い意志を継いで、ご両親が自宅車庫を障がい児専用のクライミングジムに改造。2018年10月に営業を開始したそのジムが、
『KSK’s ROCK CRAFT(ケースケズロッククラフト)』
〒365-0014
埼玉県鴻巣市屈巣3649
TEL:090-6516-5162
営業日:土・日・祝日
時間:10:00~19:00
こちらが今回、子どもたちが挑戦をさせていただく場です。ジムの代表、弓田さんのご好意で午後の営業を貸し切りにしていただき、気兼ねなく体験をすることができました。
ジムの中は高さ2,8mのスラブ(傾斜壁)や垂壁が3面に。視覚障害の方も識別しやすいようにと2面は黒く塗られています。
壁には子ども達が興味を持って取り組めるよう、カラフルで様々な形のホールド(突起物) が取り付けられています。
障がい児者専用ということで、普段は発達障害やアスペルガーなど、生まれながら脳に機能障がいがみられるお子さんやご本人が利用されているとのこと。
ボルダリングは関節の曲げ伸ばしが多く、全身に刺激を与えることが出来ます。
また、手足のコーディネーション運動などで脳と体の連動性を高めることが出来るので、脳機能や体力の向上が見込めるとのこと。
多岐にわたる効果が期待できるので、療育にボルダリングをプログラムとして取り入れる施設も増えているようです。
日本体育協会公認スポーツクライミングコーチ 清水広明さんに教えていただきました
今回体験にあたり、ジムでは手足に疾患のある子どもの対応は初めてという事で、安全性を考慮し、コーチの方にお越しいただきました。
ご指導してくださったのはチャボウズこと、日本体育協会公認スポーツクライミングコーチの清水広明さん。
清水広明コーチ経歴
チャボウズ クライミングクラブ
http://chabouzu-climbing.com/free/profile
【コーチ歴】
2010年〜2016年 パンプジュニアクライミングクラブ チーフコーチ
2016年〜2017年 東京都ジュニア選抜 ボルダリングコーチ
【保有資格】
日本体育協会公認スポーツクライミングコーチ3
日本山岳協会公認C級ルートセッター
日本山岳協会公認C級審判員
指導は先ず基本のルール説明から。ケガ防止のためにとても重要です。
① 着地は必ず足から行う。
② 壁の上部から飛び降りない。
③ 下りる前に後ろを確認する。
④ マットの上を走らない。
⑤ 大声で騒がない。
⑥ 勝手に登らない。
▲指導を受ける様子
次に、指や手首がしっかり曲がるか、足を握れるかなど、子どもたちの手足の状態を確認していただきました。
指導を受けた子ども達の疾患はこちらです。
・Yくん(4歳・最年少!) 裂手症/左手2指欠損
・Nちゃん(6歳) 裂足症/右足2趾欠損
▲手足確認
そしていよいよ指導開始。 子ども達への指導経験が豊富な清水コーチ。開始後すぐに、右足股関節の硬さなど、改善すべき点を見抜いてくださいました。
黙々と登る最年少Yくんには"クライマー向き"とのお墨付きも!
※今回、特別に裸足で体験させていただきましたが、通常ジムや施設では靴の着用を求められますのでご注意下さい。
▲補助を受けながら登ります
▲高い位置にチャレンジ!
【清水コーチアドバイス】股関節の柔軟性は重要!
「体の柔らかいバレエダンサーこそ最もクライマーに適している。」と仰るくらい、体の柔らかさ、特に股関節の柔軟性はボルダリングをする上でとても重要だそうです。
また、股関節の可動域を広げることで高い位置のホールドに足がかけられ、腕や指への負担を軽減することも出来ます。
▲ガニ股指導
ケースケズロッククラフトさんは、ガバホールド(比較的大きくて掴みやすい)を多数配置してくださっているので、欠損している側の手でも、手のひら全体を使ってしっかり安全に掴むことが出来ていました。
ホールドの持ち方は様々あるのですが、小指を壁側にして手のひら全体で包み込むような持ち方(ラップ持ち)は、指の力をあまり使わずに済みます。
指の力を温存するための技術なんですが、自然とこの型が出来ているお子さんも!
ボルダリングというと、つい腕力を使って登るもの(腕力登攀)と思いがちですが、重要なのは『足で登る』ということ。
基本姿勢である三点支持*の体勢で腕をしっかり伸ばし、膝を曲げ重心を下に置く事でバランスが取れ、腕や手・指にかかる負担を減らす事が可能となります。
また、清水コーチのお話では、手足四本を内側に向ける力、挟み込む力がしっかりと加えられていれば、手や指に負担をかけずに体を保持する事が可能だとも仰っていました。
※三点支持とは:四肢のうち三肢で体を支えること。両足が開いている場合は片手を身体の中心に(三角形)、両手が開いている場合は片足を中心に(逆三角形)置く事でバランスを取ることが可能に。
▲三点支持コーチお手本とY君の綺麗な姿勢
▲コーチ、トラバース(横移動)お手本
▲浅原代表も親子で一緒に!
ボルダリングは足の使い方もとても重要です。
基本は親指を意識したつま先立ち。
そうすることで足首が自由になり、登る向きを容易に変えることができ、腕や手への負担軽減にもなります。
つま先部分が厚めのクライミングシューズ(1サイズ小さいもの)をベルトでしっかり留めて履くことで、足趾欠損部が保護されつま先立ちも可能になります。*2趾欠損の場合
小さいお子さんはまだ運動靴で十分ですが、続けていこうとお考えの方はマイシューズのご用意もご検討ください。
【清水コーチアドバイス】足の握る力を鍛えよう!
足の握力(足趾把持力)を鍛えることで、ふくらはぎや太腿の裏、臀部まで脚裏全体にその力が効いて、壁の上で体を保持できるようになります。
足底筋を鍛えることは、欠損などでバランスを欠いた足を補う上でも必要です。
足を握ったり開いたり、床に置いたタオルを足趾だけで手繰り寄せる運動などを行い、足底筋を鍛えましょう!
▲Y君ゴールで満面の笑み
最後に指導を受けていなかった兄妹たちも参加して、2チームに分かれてのジャンケンゲーム(横移動しながら出会ったらジャンケン)!
今日一の盛り上がりの中、体験会を終了させていただきました。
今回体験する様子を見ていて、手足に欠損などの疾患を抱えていたり*、握力が弱かったりする子ども達でも、工夫次第でボルダリングに取り組めることが分かりました。
今回の体験会が、皆さんのお子さん達のチャレンジするきっかけになれば幸いです。
弓田ご夫妻、清水コーチ、この度は本当にありがとうございました!
※手足の症状には個人差があります。指の動きや力などを十分ご確認いただき、保護者の皆様のご判断の上でお試しください。
参加ご家族の声
・浅原代表ご家族
『参加する前は”やってみて万が一できなかったら自信をなくしてしまうかも”なんていつもの心配性が出てしまっていたのですが、当日は心配もなんのその、あっという間にするすると上まで登っていくみんなの姿がありました。
やはり【できないかも】という気持ちは大人の思い込みなんですよね。
清水コーチの指導で、娘の右足の股関節が硬いことも初めて知ることができました。
このボルダリングジムは少人数貸切ということもあって、ものすごくアットホームな雰囲気で実家に帰ってきたような暖かさがありました。
娘にとってもとても楽しい体験だったようで、帰ってすぐに”次はいつ行くの”と言っていました。笑
ぜひまた伺いたいです。施設長の弓田ご夫妻、清水コーチ、ありがとうございました!』
・Yくんご家族
『本人も自分には無理なのでは…と思っていたようですが、スイスイ登れるようになってとっても自信になったようです。
疾患側の腕が細く筋力がついていないことが心配でしたが、これなら必然的に両腕を使うので筋力アップが期待できます。今後も家族で通ってみたいです。』
・Nちゃんご家族
『弓田ご夫妻、清水コーチ、貴重な体験をさせていただきありがとうございました! 始めは手がクロスしたりとバランスの悪い登り方だったのですが、ご指導いただいたおかげでスムーズに登れるようになりました。今後も是非続けていきたいと思います。』
達成感が自己肯定感を育む!
ボルダリングは体幹が鍛えられるので基礎体力や運動能力の向上が見込めます。また思考力や判断力、集中力なども鍛えられ、子どもの成長にとってプラスの効果が大いにあります。
足で登ることに重きをおかれてはいますが、もちろん手や指の使い方も非常に重要です。
手足に疾患のあるお子さんが試してみると、少しつまずいてしまうかもしれません。
ですが、みんなより登るのに時間がかかってもいいじゃないですか。
みんなと登るルート、登る方法が違ってもいいじゃないですか。
基本姿勢で安全性を守りつつ、自分の手足に合った掴み方、バランスの取り方、体の支え方、子ども達は自分で見つけ、そして上を目指していきます。
今回体験させていただいた子どもたち、壁から落ちても何度も何度も上を目指して登り続けていました。登りきれた時は満面の笑みです。
この達成感が子どもたちの"できる!"という自己肯定感を育んでくれたものと思います。
子どもを受け入れているジムや自治体運営の公共施設も増えています。ジムはハードルが高いとお考えでしたら、自宅の壁に取り付けられるホールドも販売されています。
是非、ボルダリングを通して子ども達の挑戦する心、自己肯定感を育んでいただければと思います。
そして2020東京オリンピックではボルダリング競技に挑戦する日本代表のクライマー達を、是非親子で一緒に応援しましょう!
【協力】
・ケースケズロッククラフト
https://ksks-rock-craft.p-kit.com/
・チャボウズ・クライミングスクール
http://chabouzu-climbing.com/
都内のジムを中心にスクールを開催されています。
クライミングは危険を伴うスポーツです。たとえ、「ルール」を守っていても時として最悪の結果を招くことがあります。行動の結果が予測できない人や、予測できても、自分には受け入れられないと考える人は、クライミングをやるべきではありません。同様に、完全な安全を求める人は、クライミングを行うべきではありません。
【日本フリークライミング協会HPより引用】
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4コマなのでお昼休みに,お休み前に,通勤通学時に、さくっと読んでもらえると思います😊
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NPO法人Hand&Footでは、生まれつき右手の指が3本の女の子のものがたりを制作しています。
「ふつうって何だろう?」
「多くの人と違うことはかわいそうなこと?」
この絵本を読んで得られる気づきの一つ一つが少しでも多く集まれば、世の中の「驚き」も変化していくと信じています。
この絵本と共に、「初めて会ったとき、どうかびっくりしないでね」そんな気持ちがたくさんの人に届くことを、子どもたちと共に願っています。
少しでもこの絵本に興味をもってくださる方
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