保育園・幼稚園
2018.03.07

手足にうまれつきの障害がある場合、保育園や幼稚園はどうなるの?

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先天性四肢障害(四肢欠損,欠指,裂手,裂足,絞扼輪症候群,短指,巨指症,多指症など)をもつお子さんのご両親のかたにとって、

「保育園や幼稚園ってどうなるの?入れるの?」

ということは、心の中にある不安のひとつだと思います。

また、保育者や教育関係のお仕事をされている方からも、
対応はどのように?担任としてその子に何をしてあげればよいのか?」という疑問が寄せられています。

そこで、今回左手全指欠損のお子さんをもつHand&Footの会員さんがご自身の経験を元に、保育園生活についてのコラムを執筆してくれました。

入園について親御さんへの説明できなかったことに対する工夫・・・
など、6年間のご経験の上でのエピソードはとても貴重なものでした。

生まれたばかりのお子さんをお持ちのご両親や、保育園・幼稚園への入園を控えているかた、
保育・教育関係者のかたは是非参考にしていただければ嬉しいです。

きっと、これを読んで頂ければ今後について、少しでも安心して頂けると思います。

左手全指欠損の次男、6年間の保育園生活

保育園の写真

多くの人と違うカタチの手足で生まれてきた我が子。
幼稚園や保育園には入れるんだろうか…?

お父さん、お母さんたちが1番気になるところではないでしょうか。

また、保育園や幼稚園、学校などで先生をされている方からも
是非一般向けに情報を共有してほしい、という意見を頂いております。

我が家の場合においてにはなりますが、左手全指欠損の次男が通っている保育園についてお伝えできればと思います。

いつから保育園に入ったのか?どうやって入ったのか?

幼稚園・保育園イメージ写真

私の場合、すぐに職場復帰しなければならない状況にあったため、次男は生後3ヶ月から保育園に入りました。

長男が通っている保育園に何の迷いもなく入園希望を出しました。

記憶が少し曖昧なのですが、入園申込書を提出する時に次男を連れて園長先生を訪ねました。
(私の住んでいる自治体では、希望する保育園に入園申請書類を提出します。これは自治体によるので、お住まいの自治体にお尋ね下さい。)

園長先生や顔見知りの先生に会い、次男に実際会わせて手の状況などをお伝えしました。

しかし、まだ3ヶ月。ミルクを飲んでおしっこをして寝るだけの生活で、手のかかり具合は他の子と変わりない。

こちらも保育園側も特別必要な何かがある訳でもなく、特に気を付けなくてはいけない事もない。

なので、この時はお互い「左手はない子」だけど、だからと言って特別何かしなければならない、という雰囲気にはなりませんでした。

我が家以外の御家族の入園状況も分かればいいな、ということで、
今回Hand&Footの会員50家族に幼稚園や保育園への入園を懸念された経験があるかどうかのアンケートをとってみました。

幼稚園や保育園に入園を懸念されたことがあるかどうかのアンケート結果

回答して頂いた50家族中、ほとんどの方が特に懸念されたことはなく入園できていることがわかりました。

次に、懸念されたことが「ある」と回答された方へどのような対応があったのか、最終的にはどうしたのか、ということも同時に聞いてみました。

懸念されたことが「ある」と回答された6人から、具体的な理由と最終的にどうしたのかの回答

懸念されたことが「ある」と回答された方も最終的には受け入れてくれる場所が見つかり、幼稚園や保育園に入園できていました。

もちろん症状にもよるとは思うのですが、実際の普段の保育園生活の中で、手足の指がないことに対して特別な介助や対応はほとんど発生しません。

前例がない場合は対応が保育者の方にとっては何も分からないので、入園を懸念されてしまう園がなかには出てくるかもしれません。
ですが、私たちの経験上、わかってくださる園が必ずあります。

ですから、入園について不安があるご両親は是非安心してほしいな、と思います。

また、ひとりでも入園を懸念されるかたが減るようにと、NPO法人Hand&Footでは保育者のかた・教育関係のかたへ向けた情報発信をしていく準備をしています。

私が住む市の保育協会のWebサイトには、
「働く保護者のお子さんが障がい児の場合に、健常児と共に生活する障害児保育を全園で行っています。
集団保育が可能なお子さんで、障がい児保育指導委員会が保育園での保育に馴染むと判定した児童が対象となります。」

と記載があります。是非ご自身がお住まいの各自治体に確認されてみてください。

我が家の場合は、保育園側から特に「こうしてほしい」と言う希望は特に何もありませんでした。

今思えば本当に自然と受け入れてもらったような印象です。

こうして2月生まれの次男は0・1歳児クラスに5月から通う事になりました。

保育園生活~0・1歳児クラス~

0.10.1.2

朝から夕方まで一日中保育園にお世話になりっぱなしの一年間。

寝返り、ハイハイ、つかまり立ち…身体を使った成長は、同じクラスの子を近くで見ているからなのか、長男よりも早かった気がします。

左手がない状態でハイハイ出来るのかな…なんて思っていましたが、高速で部屋の中を移動し寝返りもコロコロ。

あっという間に目が離せなくなり無駄な心配でした。

この頃はまだ身体障害者手帳も持っておらず、本当に他のクラスメイトと同じように遊び、離乳食を食べ、お昼寝をし、そうして1日が終わっていました。

先生たちも特別手をかける事もない、とおっしゃっていました。

この頃は本当に他の子と全く差を感じない時期で、ひたすらかわいい時期ではないでしょうか。

おゆうぎ会では、先生の手作り太鼓をバチでトントン叩いて終わりました。

ちなみに2月生まれなのでいつも先生におんぶされており、家でもおんぶ大好きっ子でした。

保育園生活~2歳児クラス~

22.2

自分の身の回りの事が少しずつ出来てくる頃。

手づかみで給食を食べ、外でも元気に遊んでいました。この頃からよく長男の真似をするようになりました。

そして自我が芽生え始めるのもこの頃…。

だんだんと気の強さ(意思の強さ)が出てきて手を焼き始めた時期です。

保育園での生活は…正直言うとほとんど記憶に残ってない…!それくらい何もなく平穏無事な日々を送っていたのでしょう。

先生からも特に日々の生活で困っている事を聞く事もなく、こちらも保育園側も良い意味で平凡に生活していたと思います。

この頃、やっと身体障害者手帳を取得しましたが、保育園側には特に提出する事はありませんでした。

毎年出す入園申込書には「障がい児」のチェック欄があったのですが、先生からも「そんなに特別な事が必要なわけじゃないし、まだ(チェック)必要ないんじゃ?」と
言われ、申告する事なく園生活を送っていました。

保育園生活~3歳児クラス~

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トイレトレーニングが始まり、自分一人での着替えが出来るようになる頃。

今でもハッキリと覚えているのですが、次男はどうやらクラスの中でもボタンかけが早くから出来ていた様子。

ある時、先生から「お母さん、家でもたくさん練習されたんでしょう?」と聞かれてビックリ。

なぜって、家ではほとんど練習なんてしていなかったから…。

「他のお友達が『先生できーん!やって~。』って言いに来るのに、こーちゃん(次男)は一人で黙々とボタンを通そうとしてたから…てっきり家で練習してるのかと思っ
てました!」

そう言えば、Tシャツを着る、ズボンやパンツを履く、脱ぐ、くつ下だって自分で履ける。

スモックのチャックも上げられる。制服のボタンもとめられる。外遊びの時はゴム付きの帽子をかぶり、靴をはいて外へ走って行く。

この1年でかなり色々な事が自分一人で出来るようになり、話を聞く限り先生たちもそこまで特別なサポートはしてないようでした。

だからきっと、家で私が必死に教えていると思ったのでしょうね。(笑)正直、働くお母さんはそんな暇はない!(笑)

この時に思ったことが「要は本人のやる気」これに尽きる。

3.23.3

工作ではのりやハサミを使うのもこの頃から。最初の頃は先生が紙を持ってくれて、それを切ったりのりで貼ったりしていた様子でした。粘土やひも通しなんかもしてい
ました。

保育園でベッタリ付いて見ている訳ではないので詳しい事は分かりませんが、保育園の作品展で他の子の作品も色々見てみると本当に差がなく…本人のやり方で作っているのだと思います。

保育園生活~4歳児クラス~

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この頃からやっと入園申込書の「障がい児」欄にチェックを入れました。かと言って、保育園生活は何も変わらなかったのですが…。

年少組になり、少し工夫が必要となってきました。

それは運動会と音楽発表会。

運動会では飾りのついた太鼓のバチのような物を両手に持ち、それをカチカチ合わせたりするダンスでした。

他にも、全園児による旗体操は両手で旗を持ちます。

指のない左手でどうやってバチや旗を持つか?

私と先生とで知恵を出し合い、特製リストバンドを考案。手芸屋さんへ走り家でチクチクと作りました。

4.3

棒の部分が細い旗は一般的なリストバンドを手首の太さに合わせて詰めて縫い、そこへ旗を差す。振っても意外と抜けません。

持つ部分が太いバチは幅広の布テープに面ファスナーを縫い付け、さらに髪止め用の太めのゴムを取り付け2段階でぎゅっと締められる構造に。

バチをカチカチ合わせてもズレない物が出来ました。これは音楽発表会でウッドブロックを使う時にも使用しました。

見本も何も無い中、ネットで似たような物を必死に探したり、そこから色々試しながら改造したり、先生の協力もあり出来上がった特製リストバンド。
(これはその後ずっと活躍する事になります。)

私が本当に嬉しかったこと。

それは、このリストバンドをなるべく自分で取り付けて、取り外しまで1人で出来るように先生がしてくれたこと。

4.2

どうしても無理な時にはもちろん手助けをしてくれるのですが、音楽発表会でウッドブロックを持つ時は最後まで見守ってくださいました。

それが出来るようなリストバンドを考えてくれたのです。

作るのは私が担当しましたが、その練習は園で先生方が。

「特別視しない」姿勢が感じられて、本当に嬉しかったです。

保育園生活~5歳児クラス~

5.1

年中組になり、周りのクラスメイトから少しずつ

「こーちゃん(次男)の手はどうしてこんなカタチなの?」

と聞かれる事が増えました。

そうした中で1番傷ついた反応。

それは親が『ごめんなさい!』と謝ってくることでした。

子どもたちは純粋に不思議に思い、私に聞いてきただけ。傷つけるつもりも、哀れに思う気持ちも何もありません。

それなのに、ここで大人に「ごめんなさい」「そんな事を聞いてはダメ」と言う反応をされると、子どもたちは「自分は何かまずい事を言ってしまったのではないか」「聞いてはいけない事を口に出してしまったのではないか」というマイナスイメージがついてしまいます。

これではマズイ、と春にあった保護者会で次男の手の事について話すことにしました。

あらかじめ先生に事情を話し、保護者会の中で少しだけ時間を取ってもらう事にしました。

先生も「私たちが伝えるよりも、お母さんからの言葉の方が絶対に良いので、話していただけるならありがたいので是非お願いしたいです!」との事でした。

保護者会の数日前に何を話すか、Hand&Footのサイトにある日記を参考にしながら簡単に箇条書きにして頭の中を整理していたのですが、いざ保護者の前に立ち話し始め
ると、なぜか涙が出てきてしまい言葉に詰まってしまいました。

それでも何とか落ち着いて1番伝えたい事を話しました。

5.35.2

「次男の手は生まれつきで、原因は医者にも誰にも分からない。
子どもたちが不思議に思っていたら、『聞いてはダメ』と言うのではなく、どうか一緒に不思議がってほしい。
だって本当に不思議なのだから。そう思う事は悪い事でも何でもないのだから。」

紙に書いて持って行かなかったので、きっと同じような事を繰り返し話してしまった気がします。
皆さんはぜひ紙に書いて持って行ってください。(笑)

先生も「クラスの子どもたちは自然と(次男の)手を受け入れていて、溶け込み過ぎてきっとみんな気が付いていない。」と説明してくださいました。

保護者会が終わり、何人かのお母さんが話しかけてくれたのですが、0歳からずっと同じクラスなのに「今日まで全然手の事に気が付きませんでした!」と言うお母さ
ん。

「話してくれて良かったです。(何が言いたいのか)ちゃんと伝わりましたよ。」
と言うお母さんもいました。

支離滅裂だったかもしれませんが、きちんと皆さんの前で話して良かったと思っています。

保育園生活~6歳児クラス~

6.36.1

いよいよ年長組さん。
身体を使って遊ぶ事が大好きになりました。

ただ、かけっこやボール遊びは大好きですが、鉄棒やなわとびはあまり好きではない様子…。

鉄棒に関しては、長男も得意ではなく小学生になってもなかなかできなかったので、こればっかりは「好きか?嫌いか?」もあるかな…と思い、無理に頑張らせてはいま
せん。

そう言えば長男も逆上がりや前回りができるのかしら…?現在小学4年生ですが。

なわとびは、始めの頃リストバンドに挟んで飛んでいたようですが、ある時左手首に巻いて飛んだらうまく飛べたようで、それからは結構練習しているようです。

その子に合った色んなやり方を探していけば、きっと前に進めると実感しました。

年少組で作った特製リストバンド。

運動会と音楽発表会では毎年大活躍なのですが、年長組では運動会で鼓笛隊の衣装を着て演技をするので、衣装の色に合わせてリニューアル。

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すると、その新しいリストバンドが気に入り、嬉しくて練習の後も給食の時までずっと手首にはめていた次男。

先生が「私が『汚れると大変だから外しておこう!』と言うまでずっとしてたんですよー。」と嬉しそうに教えてくれました。

運動会の時も演技中「リストバンドを自分でサッと外して列に並ぶ」という場面があったのですが、後ろにいる友達が手伝う係になっていたらしく、「もし間に合いそう
になかったら○○君が手伝うことになってたんだよ。」と家でビデオを見ている時に教えてくれました。

先生がちゃんと決めていた、と。

よくビデオを見てみると、確かに友達がサッと手を貸してくれている。
たったそれだけの事ですが涙が出てきて…。

ここでもやっぱり先生たちが特別に次男を扱う事なく「やれるだけ自分一人でやる。どうしても無理なら近くの友達が手伝う。」事を通してくれたから。次男も周りの友達もそれを嫌がる事なく、自然とやってのける。

さも当たり前のように。それは決して「かわいそうだから」という姿勢ではないのです。

私たち大人は、子どもたちのこう言う心を忘れてしまっているな…と感じました。

やり方は人それぞれ。出来るスピードも人それぞれ。
子どもたちのチャレンジを見守って

長くなりましたが、以上が次男の6年間の保育園生活です。

これ以外にももっともっと色々な事がありましたが、辛く悲しい事はほとんどなく、嬉しい事の方が多くて、本人も毎日楽しそうに過ごしていました。

3月。もうすぐ次男は家よりも長く生活したこの保育園を卒園します。

これを書いていてすでに涙が止まりませんが、この保育園には本当に感謝しています。

何より、どの先生たちも自然と次男の手を受け入れて、特別扱いする事なく、時には厳しく、時には優しく、最後まで手を出さずに見守り続けてくれました。

これは同じような手足を持つお子さんをお持ちのお父さんお母さんが1番望む事ではないでしょうか。

やりにくい事、苦手な事、時間がかかる事、たくさんあると思います。

でもそれって手の指が無いから?足の指が多いから?
きっと違う。

その子にとって生まれて初めての事だから。

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手足が同じカタチでも、違うカタチでも、生まれて初めて出会うモノ、コトにチャレンジしているから。

やり方は人それぞれ。出来るスピードも人それぞれ。

保育園や幼稚園の先生はもちろんの事、お父さん、お母さんもそれを思い出し、子どもたちのチャレンジを見守ってほしいと思います。

「できないかも…。」ではなく「どうやればできるか?」

それだけで子どもはどんどん前へ進んで行くのです。

以上が私が6年間で感じた事です。あくまで我が家の場合でしたが、少しでもこれから先の未来を想像して楽しみにしていただけると嬉しいです!

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