当事者からのメッセージ
2018.04.15

「困っている人の力になりたい。」限界を決めず挑戦を続け整形外科医に-合短指症でうまれた小林樹さん

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はじめまして!
千葉大学医学部附属病院整形外科、小林樹と申します。

私の左手は合短指症という先天異常で、左手の人差し指、中指、薬指がありません。

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私は平成30年度より、千葉大学整形外科に研修医として入局し、現在整形外科医として働いています。

私のこれまでの経験が同じような状況の方に少しでも役立てばという気持ちで、この記事を書かせて頂くことになりました。

当事者やご両親を少しでも勇気づけられれば幸いです。

左手指3本欠損で生まれて-整形外科医を目指したこれまでの日々

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幼少期には友達に手のことをよく聞かれたり、からかわれたりすることがありました。

ときには私の左手をみた子が怖くて泣き出した、という経験もあったり…ただ、家族や周りの方のおかげで、私はなに不自由なく過ごすことができました。

小学生の時に剣道を始めて、大学まで続けました。

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片手用リコーダーを用意してもらったり、縄跳びにも紐をつけて工夫し、学校生活も大きな問題なく過ごせたと思います。

「病気で困っている人の力になりたい」医師の道へ進んだきっかけ

生まれた時には小指はかなり短く親指小指ともあまり動かすことができませんでした。

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その後、二度の手術を受け小指が長くなり、指の付け根でものをつまむことができるようになりました。

治療によって左手の機能が著明に改善したことで、整形外科の主治医に対して、感謝と尊敬の念を持って育ってきました。

お世話になった整形外科の先生方のように、病気で困っている人の力になりたい

その気持ちで、医師を目指しこれまで進んできました。

実習が進む中で診療科の選択において、

「患者さんの役に立つことができればいいのでは・・・」

と、ハンディキャップの少ないと思われる、手術のない科を考えたこともありました。

ただ、いろいろな科を勉強すれば勉強するほど、そして整形外科の仕事を見れば見るほど、

元々の志望動機であった整形外科医になりたい

整形外科の中でも手の専門家として、特に自分と同じような先天異常に携わり、
先天異常の子供の患者さんの手の機能や生活の質に貢献したい

と強く思うようになりました。

既成品の医療器械が持てなかった

医学部6年生の時に地元千葉県で働きたいと考え、千葉大学整形外科を見学させていただいたとき、大鳥教授と手の外科の松浦先生に出会いました。

おふたりに整形外科医になりたいとご相談させて頂いたのですが、私が整形外科医となり手術を行うためには、問題があることがわかってきました。

まずは鑷子(せっし)など左手で扱えない器械があること。
そしてもう一つは、左手に合うグローブ(手袋)がないことです。

学生実習の際は既成品の鑷子とグローブを使用していたのですが、鑷子を左手で持つことはできても、鑷子の先端に力を込めてものを摘む動作はできませんでした。

グローブに関しても、余った指の部分が妨げになり、正確な操作を行うことが困難でした。

指の欠損があっても扱えるオーダーメイドの器械を作成

「鑷子が扱えない」という問題に関しては、先生方からデバイスを工夫すると良いのでは、というアドバイスをいただき、田中医科器械製作所という会社を紹介していただきました。

そして一年間の試行錯誤の末、私が左手で扱うことができる鑷子を作成していただきました

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2本の指を閉じるよりも開く時の方が筋力が強い、という私の左手の特徴を活かし、指を開いた時に鑷子の先端が閉じるようになっています。

長さを変えたもの、鑷子の先に鉤がついているものなど、現在11本のオーダーメイド鑷子を使用しています。

「左手に合うグローブがない」という問題に関しては、粘土やCTで採寸・採型を行い、材質や厚さを既存製品をベースに決定。
処置用未滅菌と手術用滅菌のカスタムメイドグローブを作成していただきました

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これまでのように余った指の部分が操作の妨げになることがなく、左手とその指間にグローブがフィットしているため把持力も強くなりました。

自分と同じような患者さんの機能回復に貢献したい

私が強く志望する整形外科医への道を開いてくださった、主治医の先生、千葉大学整形外科の先生方をはじめ、多くの方々への感謝の気持ちは言葉では言い尽くせません。

手術で機能が向上した左手と、作成して頂いたオーダーメイド鑷子・カスタムメイドグローブを使って、

自分と同じような疾患の患者さんの機能回復に貢献し、患者さんやそのご家族に寄り添った整形外科医になりたい

という想いで、現在も日々努力を重ねています。

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「制限せずに見守って」限界を決めずに挑戦することが大切

四肢に障害があっても限界を決めずに挑戦して良かったと思います。

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ご両親の方はご心配もおありかとお察ししますが、できるだけお子様に制限せず見守ってあげていただけたらと思います。

この記事を読んでくださった方々にも、私たちのような患者・家族がいることを知っていただけたら幸いです。

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「ふつうって何だろう?」
「多くの人と違うことはかわいそうなこと?」

この絵本を読んで得られる気づきの一つ一つが少しでも多く集まれば、世の中の「驚き」も変化していくと信じています。

この絵本と共に、「初めて会ったとき、どうかびっくりしないでね」そんな気持ちがたくさんの人に届くことを、子どもたちと共に願っています。

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いつかふつうに出会えるように。

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